「第16回 チョウ類の保全を考える集い」を開催しました
- 2020/02/28
- 19:08
ご報告が遅くなりましたが、2月1日(土)「第16回チョウ類の保全を考える集い」を開催しました。
寒い中にも明るい日が射し、春が近いと感じられる朝でした。
お手伝いスタッフの皆さまには、早めに集合していただき、打ち合わせです。
会場設営、受付の流れなどを確認しました。

受付開始は10時でしたが、早めにご来場くださる方も多かったです。
受付では、名札とレジュメをお渡しし、ご着席いただきました。

松村代表理事の挨拶、諸注意の伝達のあと、プログラムがスタートしました。

午前中(第1部)は、「モニタリング調査とチョウの生息状況について」と題し、下記の2講演でした。
(わかりやすいように、番号をつけました。)
①「モニタリングサイト1000里山調査から明らかになった里山のチョウ類の危機」
②「絶滅危惧種および庭のチョウ類調査によるチョウ類の生息状況の推移」
①は、日本自然保護協会の藤田卓氏より、ご講演いただきました。

昨年秋に、新聞等でも話題になった、里地でのチョウ類の全国的な調査結果や、その背景について、わかりやすく解説していただきました。
調査結果やメディア報道について、知っていた方に手を挙げていただきましたら、たくさんの手が挙がりました。

調査結果に基づくチョウ類の現状は、環境省のレッドリストには掲載されていない普通種(ミヤマカラスアゲハ、ゴマダラチョウ、イチモンジチョウなど)の減少率が高かったこと、普通種ほど過小評価しやすい可能性があるそうです。
そして、普通の里山の保全が重要で、その仕組みづくりが必要との事でした。
続いて②は、当会事務局長の中村が講演しました。


庭のチョウ類調査や秦野市のオオムラサキ幼虫調査の結果報告、各絶滅危惧種の保全状況報告、ヨーロッパでの調査結果やその手法などについて紹介しました。
チョウ類全体における減少は、大きなレベルでの自然環境の変化が要因である可能性が高く、その要因(気候変動、農薬の使用、里山の衰退など)の悪影響を明らかにしていくことが重要と述べ、
全体像を明らかにするためには、より多くのモニタリングデータが必要で、調査箇所数をさらに大きく増やしていくことが必要とのことでした。
お昼の休憩時間内に、当会の第14回会員総会が開催されました。
事業報告や予算案などの議案が出され、ご出席の正会員の皆さまに承認をしていただきました。

ご出席くださいました皆さま、委任状をお送りくださいました皆さま、ありがとうございました。
今年度も、チョウを保全する活動に邁進いたします!
午後の前半(第2部)は、自然エネルギーと生物多様性の保全と題し、下記の3講演でした。
(プログラムの③と④の順番が入れ替わりました。)
③「長野県諏訪市四賀ソーラー事業(仮称)計画について」
④「増え続ける自然エネルギー利用 ~昆虫類の保全の観点から新たな方向性を考える~」
⑤「岡山県真庭市におけるバイオマス利用の取り組み」
③は、中央大学理工学部の須田真一氏より、ご講演いただきました。


自然再生エネルギーの問題点を、長野県諏訪市四賀(霧ヶ峰地区)で現在進行しているメガソーラー開発計画を例として、お話しいただきました。
計画地は、過去には草原性チョウの宝庫として知られていた場所で、今は、植林地が多いものの、斜面型湿原が残されているとの事。
ご自身の調査では、絶滅危惧種のホシチャバネセセリとヒメヒカゲを確認し、他にも、諏訪マスの繁殖地やサクラソウの自生地も存在する場所だそうです。
環境アセスメントにおいて、これらの貴重な動植物に対する影響がしっかり評価されておらず、現在計画されている保全対策では保全効果が小さく、工事による動植物への悪影響は非常に大きいと考えられるということでした。
さらにこうした状況は行政および事業者ともに把握できる状況にあるにもかかわらず、有効な対策が取られる可能性が低く、予定通りの開発が行われる可能性が大きくなっているとのことでした。
自然再生エネルギー自体は悪ではないが、開発するのであれば、負の影響が可能な限り最小限となるように取り組むことが社会的責務であると述べ、私自身も同感しました。
④は、当会事務局長の中村による気候変動と異常気象の状況悪化を止めるため、バイオマスエネルギーの可能性にも触れて、脱炭素化をどう進めていくかの考察についての講演でした。

日本の森林の年成長量分からバイオマス発電しても、国内の電力の数パーセントにしかならないので、バイオマス発電が中心にはならないとしても、里山の利用と自然エネルギー利用をリンクさせることによって、里山の生物多様性を取り戻すチャンスになるのではないかとの事でした。
⑤は、岡山県真庭市職員の増井太樹氏に、ご講演いただきました。

岡山県北部の真庭市は、森林率79%、林業が盛んで木材流通一貫した体制が地域内に存在しているそうです。
真庭市では、森林情報のデータベース化によって、効率的な森林経営を可能にしているとの事。
その中で、製材端材や樹皮の有効利用が長年の課題だったとのことですが、2012年にFIT制度ができ、これによりバイオマスの有効利用が可能となったとの事。2015年に「真庭バイオマス発電所」が運転を開始し、利益を山村所有者へ還元する仕組みもできているそうです。

そのほかにも、広葉樹の活用などの取り組みも紹介されました。
まだ課題もあるのだと思いますが、地域の木材産業がしっかりしていて、バイオマス発電ができていることは、とても素晴らしいと思いました。
15時から30分ほど休憩時間ですが、この時間を利用して、ボランティア説明会を行いました。
飼育ボランティア、モニタリングボランティア、事務局ボランティアの各担当者のところに集まっていただき、今後お手伝いいただける方には、ボランティア登録をしていただきました。


ご登録してくださいました皆さま、どうもありがとうございました。
各ボランティアは随時募集しておりますので、ご興味のある方は、事務局までご連絡をお願いいたします。
(当会HP内の問合わせ先まで、お願いいたします。)
午後の後半(第3部)は、保全活動報告と題し、下記の2講演です。
⑥「岩手県安比高原における馬の放牧による草原の再生」
⑦「大分県におけるオオルリシジミの保全活動」
⑥は、岩手県立大学の渋谷晃太朗氏より、ご講演いただきました。


安比高原は、スキー場で有名ですが、北西側に隣接して美しいブナ二次林の中に、半自然草原が広がっているそうです。
今から30年位前に牛馬の放牧が休止されて以降、森林化が急速に進み、草原の面積が減少し、景観が大きく変化したとの事。
農耕馬を利用した半自然草原再生の試みや広報活動などをされているそうですが、多くの課題があるとの事で、持続可能な管理のためには、昆虫類の調査など、皆様にご協力をお願いしたいとの事でした。
⑦は、くじゅうオオルリシジミ保存会の川野雅喜氏に、ご講演いただきました。


九州の久住高原で、2010年に40年ぶりに生息が確認されたオオルリシジミの保護が始まる前と、保護が始まってからの2年間についてご講演いただきました。
川野氏ご自身が、オオルリシジミを守ろうとご尽力され、「くじゅうオオルリシジミ保存会」を結成し、小中学校の子供たちと観察会を開催したり、地域の皆さまと交流をしたり、活動されている様子を、熱く語ってくださいました。
オオルリシジミを保護する上で特に重要視されているのは教育で、次世代へ保護活動を引き継ぐためには極めて大事なことという言葉に、共感しました。
様々なメディアの取材の映像も上映してくださり、その中で、「貴重なチョウが故郷にいることは誇りだと思う」という女の子の言葉に、未来に期待が持てました。
最後は、チョウ類保全協会より、絶滅危惧種の保全活動の報告でした。
・アポイ岳での高山植物再生、ツシマウラボシシジミ報告・・・事務局中村より

・フサヒゲルリカミキリ・・・事務局永幡より
・アカハネバッタ・・・寒河江氏より


・オガサワラシジミ・・・事務局檜山より


・絶滅危惧種モニタリング報告・・・鶴藤氏より

それから、事務局のイベント出展報告や、認定NPOのご案内などがあり、閉会となりました。
ご参加いただきました皆さまには、長時間のご聴講、お疲れ様でした。
最後まで、ありがとうございました。
閉会後には、センター棟2階の「カフェフレンズ」にて、懇親会が開催されました。
普段お会いできない方ともお話が弾み、交流の場となりました。



ご参加いただきました皆さま、ボランティアでお手伝いくださいました皆さま、どうもありがとうございました。
このイベントは、来年も同時期に開催予定です。
日時など決まりましたら、ホームページにてお知らせいたしますので、皆様のご参加をお待ちしております。
事務局 井上◇”◇
(photo by Masunaga、Inoue)
寒い中にも明るい日が射し、春が近いと感じられる朝でした。
お手伝いスタッフの皆さまには、早めに集合していただき、打ち合わせです。
会場設営、受付の流れなどを確認しました。

受付開始は10時でしたが、早めにご来場くださる方も多かったです。
受付では、名札とレジュメをお渡しし、ご着席いただきました。

松村代表理事の挨拶、諸注意の伝達のあと、プログラムがスタートしました。


午前中(第1部)は、「モニタリング調査とチョウの生息状況について」と題し、下記の2講演でした。
(わかりやすいように、番号をつけました。)
①「モニタリングサイト1000里山調査から明らかになった里山のチョウ類の危機」
②「絶滅危惧種および庭のチョウ類調査によるチョウ類の生息状況の推移」
①は、日本自然保護協会の藤田卓氏より、ご講演いただきました。

昨年秋に、新聞等でも話題になった、里地でのチョウ類の全国的な調査結果や、その背景について、わかりやすく解説していただきました。
調査結果やメディア報道について、知っていた方に手を挙げていただきましたら、たくさんの手が挙がりました。

調査結果に基づくチョウ類の現状は、環境省のレッドリストには掲載されていない普通種(ミヤマカラスアゲハ、ゴマダラチョウ、イチモンジチョウなど)の減少率が高かったこと、普通種ほど過小評価しやすい可能性があるそうです。
そして、普通の里山の保全が重要で、その仕組みづくりが必要との事でした。
続いて②は、当会事務局長の中村が講演しました。


庭のチョウ類調査や秦野市のオオムラサキ幼虫調査の結果報告、各絶滅危惧種の保全状況報告、ヨーロッパでの調査結果やその手法などについて紹介しました。
チョウ類全体における減少は、大きなレベルでの自然環境の変化が要因である可能性が高く、その要因(気候変動、農薬の使用、里山の衰退など)の悪影響を明らかにしていくことが重要と述べ、
全体像を明らかにするためには、より多くのモニタリングデータが必要で、調査箇所数をさらに大きく増やしていくことが必要とのことでした。
お昼の休憩時間内に、当会の第14回会員総会が開催されました。
事業報告や予算案などの議案が出され、ご出席の正会員の皆さまに承認をしていただきました。


ご出席くださいました皆さま、委任状をお送りくださいました皆さま、ありがとうございました。
今年度も、チョウを保全する活動に邁進いたします!
午後の前半(第2部)は、自然エネルギーと生物多様性の保全と題し、下記の3講演でした。
(プログラムの③と④の順番が入れ替わりました。)
③「長野県諏訪市四賀ソーラー事業(仮称)計画について」
④「増え続ける自然エネルギー利用 ~昆虫類の保全の観点から新たな方向性を考える~」
⑤「岡山県真庭市におけるバイオマス利用の取り組み」
③は、中央大学理工学部の須田真一氏より、ご講演いただきました。


自然再生エネルギーの問題点を、長野県諏訪市四賀(霧ヶ峰地区)で現在進行しているメガソーラー開発計画を例として、お話しいただきました。
計画地は、過去には草原性チョウの宝庫として知られていた場所で、今は、植林地が多いものの、斜面型湿原が残されているとの事。
ご自身の調査では、絶滅危惧種のホシチャバネセセリとヒメヒカゲを確認し、他にも、諏訪マスの繁殖地やサクラソウの自生地も存在する場所だそうです。
環境アセスメントにおいて、これらの貴重な動植物に対する影響がしっかり評価されておらず、現在計画されている保全対策では保全効果が小さく、工事による動植物への悪影響は非常に大きいと考えられるということでした。
さらにこうした状況は行政および事業者ともに把握できる状況にあるにもかかわらず、有効な対策が取られる可能性が低く、予定通りの開発が行われる可能性が大きくなっているとのことでした。
自然再生エネルギー自体は悪ではないが、開発するのであれば、負の影響が可能な限り最小限となるように取り組むことが社会的責務であると述べ、私自身も同感しました。
④は、当会事務局長の中村による気候変動と異常気象の状況悪化を止めるため、バイオマスエネルギーの可能性にも触れて、脱炭素化をどう進めていくかの考察についての講演でした。

日本の森林の年成長量分からバイオマス発電しても、国内の電力の数パーセントにしかならないので、バイオマス発電が中心にはならないとしても、里山の利用と自然エネルギー利用をリンクさせることによって、里山の生物多様性を取り戻すチャンスになるのではないかとの事でした。
⑤は、岡山県真庭市職員の増井太樹氏に、ご講演いただきました。

岡山県北部の真庭市は、森林率79%、林業が盛んで木材流通一貫した体制が地域内に存在しているそうです。
真庭市では、森林情報のデータベース化によって、効率的な森林経営を可能にしているとの事。
その中で、製材端材や樹皮の有効利用が長年の課題だったとのことですが、2012年にFIT制度ができ、これによりバイオマスの有効利用が可能となったとの事。2015年に「真庭バイオマス発電所」が運転を開始し、利益を山村所有者へ還元する仕組みもできているそうです。

そのほかにも、広葉樹の活用などの取り組みも紹介されました。
まだ課題もあるのだと思いますが、地域の木材産業がしっかりしていて、バイオマス発電ができていることは、とても素晴らしいと思いました。
15時から30分ほど休憩時間ですが、この時間を利用して、ボランティア説明会を行いました。
飼育ボランティア、モニタリングボランティア、事務局ボランティアの各担当者のところに集まっていただき、今後お手伝いいただける方には、ボランティア登録をしていただきました。




ご登録してくださいました皆さま、どうもありがとうございました。
各ボランティアは随時募集しておりますので、ご興味のある方は、事務局までご連絡をお願いいたします。
(当会HP内の問合わせ先まで、お願いいたします。)
午後の後半(第3部)は、保全活動報告と題し、下記の2講演です。
⑥「岩手県安比高原における馬の放牧による草原の再生」
⑦「大分県におけるオオルリシジミの保全活動」
⑥は、岩手県立大学の渋谷晃太朗氏より、ご講演いただきました。


安比高原は、スキー場で有名ですが、北西側に隣接して美しいブナ二次林の中に、半自然草原が広がっているそうです。
今から30年位前に牛馬の放牧が休止されて以降、森林化が急速に進み、草原の面積が減少し、景観が大きく変化したとの事。
農耕馬を利用した半自然草原再生の試みや広報活動などをされているそうですが、多くの課題があるとの事で、持続可能な管理のためには、昆虫類の調査など、皆様にご協力をお願いしたいとの事でした。
⑦は、くじゅうオオルリシジミ保存会の川野雅喜氏に、ご講演いただきました。


九州の久住高原で、2010年に40年ぶりに生息が確認されたオオルリシジミの保護が始まる前と、保護が始まってからの2年間についてご講演いただきました。
川野氏ご自身が、オオルリシジミを守ろうとご尽力され、「くじゅうオオルリシジミ保存会」を結成し、小中学校の子供たちと観察会を開催したり、地域の皆さまと交流をしたり、活動されている様子を、熱く語ってくださいました。
オオルリシジミを保護する上で特に重要視されているのは教育で、次世代へ保護活動を引き継ぐためには極めて大事なことという言葉に、共感しました。
様々なメディアの取材の映像も上映してくださり、その中で、「貴重なチョウが故郷にいることは誇りだと思う」という女の子の言葉に、未来に期待が持てました。
最後は、チョウ類保全協会より、絶滅危惧種の保全活動の報告でした。
・アポイ岳での高山植物再生、ツシマウラボシシジミ報告・・・事務局中村より

・フサヒゲルリカミキリ・・・事務局永幡より
・アカハネバッタ・・・寒河江氏より


・オガサワラシジミ・・・事務局檜山より


・絶滅危惧種モニタリング報告・・・鶴藤氏より

それから、事務局のイベント出展報告や、認定NPOのご案内などがあり、閉会となりました。
ご参加いただきました皆さまには、長時間のご聴講、お疲れ様でした。
最後まで、ありがとうございました。
閉会後には、センター棟2階の「カフェフレンズ」にて、懇親会が開催されました。
普段お会いできない方ともお話が弾み、交流の場となりました。





ご参加いただきました皆さま、ボランティアでお手伝いくださいました皆さま、どうもありがとうございました。
このイベントは、来年も同時期に開催予定です。
日時など決まりましたら、ホームページにてお知らせいたしますので、皆様のご参加をお待ちしております。
事務局 井上◇”◇
(photo by Masunaga、Inoue)